半導体デバイス・電子部品

ムーアの法則を考えてみた

業界レポート / 2016年02月

「予想がこんなにまで正しいとは思わなかったし、しかも10年以上続くとは思わなかった。50年も続いたこと自体が驚きだ」

5月11日、いわゆる「ムーアの法則(半導体の集積密度は約2年で倍増する)」を提唱した、半導体大手インテル共同創業者のゴードン・ムーア博士は、法則誕生50年を祝うイベントに集まった観客の前で感慨深げに語った。

MUA
(東洋経済online 2015年5月15日版 http://toyokeizai.net/articles/-/69633)
(写真提供:OnInnovation)

 

 

ムーアという人は、12歳で化学に興味を持ち、高校に入学する際には仲間と一緒に研究室を立ち上げて、ニトログリセリンをつくった。ダイナマイトもつくったので医療目的ではなかったらしく、爆薬づくりに興味があった。一緒に研究した同級生の中には「へまをやって腕を半分ふっとばした友達もいた」というので、私の中にあった神経質な研究者のイメージも吹っ飛んだ。荒っぽくてやんちゃなおっさんなのかもしれない。
なぜ、私がゴードン・ムーアに神経質な印象を持っていたかといえば、ムーアの法則に牽引されることにより実現された半導体部品の現状に驚愕したからにほかならない。

「シリコンチップに搭載されるトランジスタは18~24カ月で2倍に増える」というムーアの法則。現在では、当時の4万倍の数のトランジスタが乗っかっている計算になるという。
これを理解しようと筆者が頭に浮かべたイメージは30㎝×60㎝のお盆があって、その上に直径6㎝のコップが50個並んでいる。1年後、同じお盆に100個のコップを並べてね。と言われて途方に暮れる自分の姿だった。
普通の人間ならば、「もっと大きいお盆を持って来い」が正解だと私は思う。
しかし、研究者、技術者たちは、毎年のようにこの課題をクリアーし続けてきた。この法則が破られていないということは、現在(4万倍ならば)200万個のコップを同じお盆に乗せていることになる。

ムーア氏本人が「まさかこんなに長く続くとは思ってなかった」とコメントしている通り、想像すればするほど「そりゃ無理でしょう」と言いたくなる。「もともとムーアの法則はトランジスタ数についての経験則であったが、最近では集積度だけではなく処理速度の向上や消費電力の低減などを含めたより広い意味でのVLSI(半導体大規模集積回路)の進歩そのものをムーアの法則とよぶことがある。」と『集積ナノデバイス』では説明されている。
「実際のデバイスでは理想的なスケーリング則に沿って微細化が進んだわけではない。電圧の低下がスケーリング則通りに進まなかったこと、あるいはスケーリングしない物理量が存在することなどにより、微細化を進める上で様々な課題は浮上している」という。
「また、集積レベルが10億個レベルに達すると、これまであまり考慮しなくてもよかった“ばらつき”(注1)のような問題が顕在化する」とも説明されている。技術者たちが、アリの背中に集積回路を乗せても気がつかないほどの微細化を進めてきたという話を小学生の息子にしたら、「父ちゃん、それって魔法だよね。」との言葉が返ってきた。確かに魔法に違いない。魔法のおかげで携帯電話がより安くより小さく、薄くて丈夫でバッテリーも長持ちになり気分よく仕事ができる。掃除機や洗濯機みたいに必要だけれども場所を取るものには、もっと小さくなってほしい。二人の息子がアホみたいにモリモリ食べるので、冷蔵庫が小さくなると、ちと困るが。

 

『知らなきゃヤバイ!半導体、この成長産業を手放すな』
では今後の半導体産業の行方について警鐘をならしている。


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以下のところがひっかかったので抜粋する。
「半導体産業は伸びが止まるとは信じていない人が多いようです。というのは半導体チップの世の中に対する浸透度、半導体チップなしでは制御できなくなった自動車、工場、ロボット、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビなど数限りなく半導体が広く行き渡り、新しい装置やデバイスには必ず半導体チップが使われているからです。」

「それまでは半導体シリコンチップにさまざまな回路を集積し、数百万、数千万トランジスタのチップだと自慢する発表が多くありました。今や数億トランジスタのチップが売られるようになると半導体メーカーはトランジスタ数を自慢しなくなりました。トランジスタ数を競い合っている時代(1994年ころまで)はムーアの法則に乗って集積度は上がっていきました。しかし、半導体チップの目的はあくまで、人が驚くような機能を載せたり、性能を上げたりすることで、トランジスタの数を上げることそのものが目的ではありません。ムーアの法則はあくまでも結果なのです。」
「ムーアの法則とは逆に少ないトランジスタで同じ機能を実現しましたと、少ないプログラミング桁数でソフトウェアを作りましたというような発表が最近出てくるようになりました。少ないトランジスタ、すなわち小さな面積で同じ機能を作れるとしたら低コストにできます。ユーザの価値はトランジスタ数ではなく、機能・性能・コストできまるのです。」
ムーアの法則は経験則であり、企業や技術者が努力してきた結果である。ということは今後の展開は誰にもわからないということだ。この先、ムーアの法則を元に開発計画を立ててそれを実現させても、生き残れるかどうかはわからないという時代になったということか。

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早すぎる時代の流れの中で、我々のお客様がどのように変化をしていくのかを、タイロテッカー(注2)は注意深く観察しなければならない。そして従来通りのサービス形態でお客様が満足していただけるのかを、日々考え続けなければならない。「ムーアの法則」を調べることで背筋を伸ばし、身を引き締めて仕事をすることの大切さを改めて思い知らされた。

魔法と聞いて、私の頭に浮かんだのは「魔法瓶」だった。沸かしたお湯がいつまでも暖かいという魔法の瓶だ。
技術者たちは、ひと昔前では「魔法でも使わない限り無理でしょう。」ということを実現させてきた。
今後のタイロテックも、そんな技術な方々の役に立つ仕事ができる存在でありたいと強く願う。
若いタイロテッカーの今後の動きに注目していただきたい。

 

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  • ●注1.ばらつき

まったく同じサイズに設計したトランジスタで特性ばらつきが生じると、個々のトランジスタは正常に動作するものの、回路として動作しないという現象を引き起こす。また、微細化に伴い経時変化によるデバイス特性の劣化も多数報告されており信頼度の確保も重要な課題となっている。

  • ●注2.タイロテッカー

熱き情熱を持ったタイロテックの社員のこと。

参考
『東洋経済online 2015年5月15日版 http://toyokeizai.net/articles/-/69633
『インテルとともに』ゴードン・ムーア著 日本経済新聞社
『集積ナノデバイス』平本俊郎編著 丸善
『知らなきゃヤバい!半導体、この成長産業を手放すな』津田建二著 B&Tブックス
『(写真提供:OnInnovation 』

広報 小池 公彦





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