2015年初夏、横浜市郊外のキャンプ場でタイロテック恒例のBBQ大会が行われた。社員の家族も集まり毎年盛大に行われる行事だ。準備が整い始めた頃だった。「ゴブサターネ」変な訛に振り向くとストローハットにGUCCIのサングラス。どこから見ても目立ち過ぎのスレンダーな女性。そこには“Ellen Shen”が立っていた。自宅から2時間以上、電車を乗り継ぎ3才の娘と来てくれたのだ。私の勝手な思い付きでインタビューをお願いしてみると「ゼンゼンダイジョブよ。好きなようにしてよ。協力できることはなんでもするから。だけどDon’t be longネ。お楽しみが待ってるから。」即断でOKをくれたが、相変わらずのセッカチだ。以前に行ったBBQ大会で誰よりも率先し、火を起し黙々と肉を焼く姿が思い出される。
最初に担当した業務は、シリコンウェーハ・ラップ用キャリアの輸入管理と国内営業のアシスタントだった。ケラケラ笑いながらEllenが話し始めた「ラップキャリア?シリコンウェーハ?最初に聞いた時、何語で聞いても意味が分からなかったよ。Subjectが分からないのに、英語と日本語でTechnicalな話をされても知らない、眠くなるだけ。ただね、日本のシリコンウェーハ技術が凄いのは直ぐに分かった。そんな世界一のマーケットでP.R.Hoffman社(米国)の日本代理店としてシェアNo.1を絶対にとってやると思ったね」飛行機と新幹線、レンタカーを駆使して日本中を飛び回った彼女は、順調にシェアを広げていった。入社から2年が経ったころにはアシスタントの枠を越えて彼女はデバイスの輸入を手掛けるようになり、独自のプランを練り上げ実行していく。今度は、Hong Kong, Seoul, Mainland, Taiwanを慌ただしく行き来する。
入社から5年、待望の新しい家族を授かることとなる。出産、育児休暇の後、一年後復帰。子育てと家族を優先するため時短出勤をすることにした。そんな折、ダーリンの転職が突如決まった。勤務地は、横浜から100キロ以上離れた場所だった。住み慣れた横浜から家族で離れることになる。通勤時間は、一日4時間近くになり、毎日フラフラになりながら帰宅。体調も崩すようになってしまった。仕事も時間が足りず満足のいくパフォーマンスを出せない。疲れきった顔のママは、子供と向き合えるのか。ダディが安心して仕事ができる状態なのか。自問自答を一年間繰り返した。そして退職を決意した。