半導体デバイス・電子部品

「共晶はんだ」から鉛フリー

業界レポート / 2015年02月

handa

「鉛フリーはんだ」は熱い。

日本のはんだ技術者にとって、「鉛フリーはんだ」は融点も高くなるが、それ以上に改善、進歩に対する情熱が熱いものなのだろう。たくさんの解説本を端から見ていくと、その「まえがき」、「あとがき」には、人類にとって「ライト兄弟の飛行機の発明と同様の衝撃」などと書かれているものさえある。

また、ネット上ではメーカーなどが、「鉛フリーはんだ」における自社の取り組みについてこと細かく説明している。品質を確保しつつ環境にも配慮するとはどれ程の苦労を強いられるのか。画期的な改善点や日夜工夫を重ねて取り組んだ過程などが、熱く熱く語られていて、読み手の我々まで胸が熱くなる。

昔、はんだは「共晶」とも呼ばれていた。共晶は、二成分以上を含む液体から同時に析出する結晶の混合物である。「はんだ付け」とは二種類の金属と金属を接合する技術であり、その接合に使用するのが液体合金=共晶だが、一般に「はんだ」といえば「共晶はんだ」を指すことになっている。かつて鉛を中心にしていた「共晶はんだ」も、今では鉛フリーがスタンダードである。

しかしながら、鉛フリーのはんだ化は難しい。なぜなら、鉛を使うことで融点を下げていたからだ。「共晶はんだ」の融点は183℃。金属としてはかなり融点が低く加工しやすい。そのため、電気的な接合ははんだ付けで行われてきた。これに対し、基本的に鉛をほとんど含まない鉛フリーでの融点は約219℃といわれている。そのため、さまざまな課題が生まれるのである。

表 鉛フリーはんだ合金特性

合金名 組成比(重量ベース) 溶融温度 コスト
Sn-Ag共晶 Sn96.5% Ag3.5% 高い(+221℃) 高い(Sn-Pb共晶の3倍くらい)
Sn-Bi共晶 Sn42% Bi58% 低い(+138℃) 高い(Sn-Pb共晶の2倍くらい)
Sn-Ag-Bi Sn89% Bi 9% Ag 2% 高い(+184℃~214℃) 高い(Sn-Pb共晶の2倍くらい)
Sn-Ag-Bi-Cu Sn89% Bi 8% Ag 2% Cu 1% 高い(+186℃~211℃) 高い(Sn-Pb共晶の2倍くらい)
Sn-Zn-X(Xは金属) 未公表 若干高い(+190℃) 不明
Sn-In共晶 Sn48% In52% 低い(+118℃) きわめて高い(Sn-Pb共晶の25倍くらい)

 

鉛フリーはんだは、価格の安い鉛が入っていないことから共晶はんだに比べ、価格が2倍~3倍程度高いといわれている。また融点が高いため、はんだを溶かす温度を上げるか、時間を延ばす必要性が生じる。そのため、製造工程におけるランニングコストも上がる。

さらに、電子部品は数多くの種類がある。これらの電子部品には何らかの形で鉛およびその化合物が使われているといっても過言ではない。従って電子部品の鉛フリー化は、はんだに含まれている鉛のみならず、電子部品を構成する材料に含まれている全ての鉛を排除していく必要がある。

鉛フリー化を実現しても高価ではモノは売れない。「それならばコストダウンをせにゃならん」と日本の技術者は考えたのである。厳しい価格競争の中で、高い材料、加工方法を選べば会社が潰れるかもしれん。でもそこは職人のプライドだ。「しんどいけれどもやりましょう」と意地を見せつける。現代の鉛フリー化を支えているのは、こういった技術者や職人による葛藤や挑戦なのである。

一方、不良率が高いメーカーなどでは、担当者がどのようにして「鉛フリーはんだ」化を推進すればよいか悩みに悩んできた。そして悩むことで危機意識が生じ、仕事に対するマインドに変化が起き、モノづくりに対する行動に変化が起き、周囲をも巻き込んで、遂に業界全体で100%近い歩留りを達成した。

筆者の勝手な妄想だが、きっと日本中のあちこちでそのような熱いドラマが起こっていたのであろうと思う。親父、兄貴の世代もなかなかやるじゃないかとひとりごちである。

EUのRoHS指令が引き金となり、企業によっては、法規制の対象ではない化学物質であっても、疑わしき物質は設計段階から排除する傾向も強くなってきた。「予防原則」に基づいて行動する企業も出現しており、このような姿勢は、NGO/NPO団体からの高い評価を与えられる傾向にもなってきている。環境に配慮したモノづくりには、今までになかった管理手法も必要となってきており、有害物質に関しては代替技術の確立とともに代替材料への切り替えが大きな課題となっている。

 

新たな代替技術、代替物質を検討して量産に移行する場合には、当然新たな問題も起こる。日本では、早くから鉛フリー化のプロジェクトを発足させて、そういった課題に取組んで来た。例えば「鉛フリーはんだ」は、はんだ槽の腐食やウィスカーの問題が発生するが、その対策に産官学を挙げて取り組んでいる。また、欧州から環境対策の重要性が指摘されたときも、いち早く企業レベルでの対応が行われた。

EUのRoHS指令に「鉛」も使用制限物質としてリストされたが、それに屈することなく向き合い、鉛フリー化のドライバー的な役割を担ったのが日本の技術者や職人たちなのである。

 

「詳説 鉛フリーはんだ付け技術 - 創造・開発・量産への原点 -」 末次憲一郎 編著

「設計者のための実用めっき教本」 榎本利夫 / 佐藤敏彦 著

「 一問一答形式でわかりやすい 環境規制Q&A 555」 青木 正光 著

 

広報 小池 公彦





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