RoHS:Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment の略。深刻な環境被害の対策として、EU(欧州連合)が定めた電気・電子機器に含有する6種類の特定有害物質の使用を制限・禁止する指令である。
技術発展目覚ましい現代、なんと田舎のおばあちゃんがポットのお湯を使うだけで生存確認がとれてしまうという世の中である。こういった電気・電子機器を生産する過程において、有害な化学物質を含む材料が、そうとは知らずに使用されていた。産業廃棄物を処分する際に有害化学物質が、人体や環境を含めた生態系に影響を及ぼしたりすることもあり、あらかじめ悪影響を及ぼすであろう環境汚染物質を特定して基準を定め、使用しないでおこうという「取り決め」がRoHSである。
RoHS指令は2003年2月13日、WEEE指令(廃電気・電子機器の削減・再利用・リサイクルを目的とした廃電気・電子機器指令)と同時にEUの官報に告示され、2006年7月1日から施行された。RoHS指令制定の目的は、WEEE指令による廃電気・電子機器のリサイクルを容易にし、また、埋め立てや焼却処分する際、ヒトと環境に影響を与えないよう、電気・電子機器に有害物質を非含有とさせることである。販売された電気・電子機器に有害化学物質が非含有であれば、埋立処分された廃棄物に起因する土壌汚染などを防止できるわけだ。
RoHS指令で使用を制限された危険物質は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PPDE)の6種類。その物質を使用する商品を加盟国に輸出するには、該当有害物質を他のものに置き換えなければならない。しかし物質によっては代替えできないものもある。そういった物質に対しては、一定の範囲で適用が免除されることも規定されている。
欧州の決めごとと思いきや、欧州に輸出するすべての電気電子製品が対象となる。のみならず製品に含まれる部品や微量の化学・金属素材に及ぶため、広範囲の国内産業に影響する。また自分の国がこの連合に加入していなくても、加入国へ輸出する際には、その規定を守らなければ受け入れてもらえないことは言うまでもない。「EUの法規制だから日本国内には適用されないだろう」と安心してなどいられない。EUへ輸出する製品は、数多くの企業から部品や材料を調達する連鎖(サプライチェーン)で構成されており、文字通り鎖で繋がっているのである。一つの製品を送り出すために、全ての部品や材料をチェックし、書面で証明するといった手間やコストが生じる。
結果、RoHS指令により生産者、輸入者、販売者は、それぞれの立場で適合遵守の対応に追われることになった。上記の有害物質を含有した製品はEU内では販売できないため、使用禁止物質の管理を厳格にすることが求められた。取引先の設計・製造工程の調査や部品納入時に有害物質が含まれていないことを証明する定量的な分析データの提出を求めたりする必要性が生じた。
またRoHS指令適合証明のための各種情報が川上企業から川下企業に伝達されるようサプライチェーン全体で物流・商流と同時に情報が共有されることにもなった。実際の運用の場面では、法令解釈に関するいろいろな疑問や、管理コストなど工程が複雑となったことによる実施面での課題も生じており、半導体業界全体に大きな影響を与えたと言える。
参考 :環境省HP、外務省HP、経済産業省HP
:「よくわかる ここが知りたい世界のRoHS法」 日本電子㈱応用研究センター 編著
:「図解 よくわかるWEEE&RoHS指令」 WEEE&RoHS研究会 編著
2015年2月
広報 小池 公彦
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