ミリタリースペックの半導体

TQ Colmn / 2015年01月

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半導体でも使用目的によってスペック分けがされている場合があります。
このスペック(カテゴリ)とは、「部品の信頼性に関する分類・格付」と考えればいいでしょう。我々が便宜的に使っている分類の中に「ミリタリースペック」という呼称があります。
「ミリタリ」と聞いただけで「ちょっと、うぅー、あのー」と腰が引き気味になりますよね。どんなに恐ろしい石(半導体)なのでしょうか?まさか原始的な武器として投石したりしませんよね。こんなご時世そんな部品が市場に出回って大丈夫なの!!

 

 

どんな分類・格付けがあるの?


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良く使われる分類・格付としては

◆ 民生用 Commercial Spec

◆ 産業用  Industrial Spec

◆ 軍規格 Military Spec

◆ 航空宇宙 Aerospace Spec

などがあります。使用目的や環境によって同じ機能の部品でも求められる耐久性などが変わってきます。温度や電圧など動作範囲が変わってくるのです。一般家庭で使われている製品に組み込まれる半導体と宇宙や砂漠など過酷でシビアな状況下で使われる半導体では当然求められる精度や耐久性が大幅に変わってきます。季節や場所・状況などによって洋服や所作を上手に使い分ける女性のようですね。半導体だってTPOをちゃんとわきまえているのです。

 

ミリタリースペックとは

アメリカの国防総省が制定する米軍が調達・使用する物資への条件を満たしている製品の総称です。この米軍仕様は、「Military Specification(規格)/Standard(標準)/Handbook(参考)」などから定められ、世界中で権威ある規格として非常に有名です。制定されている規格番号が「MIL-XXX-XXX」とMILで始まることから「MIL規格」や「MILスペック」、「ミル仕様」などと呼ばれることが多くあります。国防省のドメインも「.mil」です。MIL規格の半導体は、「SN54シリーズ」や「/883」「5962」などが有名です。1990年代以降「MIL規格」は順次廃止・見直しが進められ、現在ではJEDEC規格へ移行・統合が進んでいるようです。
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市場で流通しちゃって大丈夫なの?

そんな怖そうな半導体が一般市場に出回って大丈夫なの?怖くなってきましたね。そういえば・・・2000年に発売されたSONYさんの「プレステ2」が“高度な兵器転用への恐れがある”として輸出規制対象(ワッセナー・アレンジメント)に指定され話題になりました。「プレステ2」に搭載されていたメモリーカードとグラフィック機能が実物のミサイル誘導システムなどに軍事転用される危険があったからです。「プレステ2」は「ミリタリースペック」ではありませんし、「ミリタリースペック」だからといって危険と直結するわけではありません。しかし武器や軍事用に使用、転用可能な製品が世界中に流通し、誰でも簡単に入手できてしまったら問題ですよね。日本では「外国為替および外国貿易法」などで管理はされていますし、米国では輸出規制「EAR」(Export Administration Regulations)などで管理されています。国際社会の安全性を高めるために先進国を中心に国際的な枠組みを作り、協調して輸出管理も行っています。MTCR(ミサイル技術管理レジーム)やWA(ワッセナー・アレンジメント)などが代表的な国際輸出管理レジームになります。タイロテックも当然ながら海外から規制対象製品を輸入する際には、必ず「用途」「ユーザ」「規制分類番号(ECCN)」や関連機関との関係性などを証明する資料を加盟国(輸出国)に提出する義務が課せられています。

 

それでもモラルが大事

一般的な物流市場に流れてよい製品か否か、国際的に管理しているから問題ないか?100%大丈夫とは限りません。近年の流通は巨大なサプライチェーンで成り立っています。ユーザをはじめ、輸出入業者、仲介業者、素材メーカなど多くの関係者のモラルがなければ安全で確かな社会が成立しません。タイロテックも流通の一角を担う者として遵法精神を大切にしていくことが我々の使命だと考えています。

 

 

下島元





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